初めての不妊治療6


ここからはあまり覚えていないのだが、



30分後くらいにだぃちゃんもマンションに来た。



お母さんと挨拶をし、



私をさすっていた。



私が少し落ちついたのを確認すると、



病院が開くまで時間があったため、



シャワーを浴びに行った。



私は朦朧としていたが、



だぃちゃんがお風呂上がりに、


脇スプレーをふんだんにかけている音は聞こえた。



私を車に乗せ、


お母さんを後部座席に乗せ、


だぃちゃんの車はクリニックに向かった。



道はすごく渋滞しており、


通常30分で着くところ、


1時間半かけてクリニックに到着した。


だぃちゃんは



待ってます



と母親に言ったようだが、



母親は


仕事に戻ってくださいと


忙しいだぃちゃんを帰したらしい。



クリニックに着くと、



すぐに採血室に呼ばれ、



血圧と熱を測った。



熱は微熱だった。



看護婦さんは、



昨日まで元気だった私の急変に


みんなびっくりしていて、


すごい速さでベッドを用意してくれて、



私を横にしてくれた。



みんな優しい言葉をかけてくれて、



なんだか、ボロボロと泣いてしまった。



うっ



うっ



と泣いていると、



すぐに内診室に行きましょう



と、看護婦さんに腰を支えられ、


かばんを持ってもらい、



いつも3時間待ちくらいの内診室に



待ちの患者さんを数十人かっ飛ばして、



この日は到着5分くらいに呼ばれた。



先生は、




すっとんで内診室に入ってきた。



松井さんに何があった?!



とエコーで子宮を見てみると、



先生が発狂した。



なんだこれは?



膀胱が肥大化している!



お腹の大部分が膀胱だよ!



なんだこれは、、、






ペットボトル1本と同じ量の尿が


膀胱に溜まっていて、



エコーには、水枕の大きさくらいの、


嘘みたいな大きさの膀胱が写し出された。




私が、



おしっこが出ないんです。


お腹が痛くて、


尿意が全くないんです。



と言うと、



先生は、看護婦さんに、



すぐに緊急で都立病院の泌尿器科に電話をして!



それと紹介状の用意!



松井さん、大丈夫?



子宮はたしかに腫れてはいるんだけれど、



膀胱が見たこともない形と大きさになってるんだ。


今朝の症状は、


膀胱の変形のせいだと思います。


不妊治療専門のうちではちょっと心配だから、



都立病院で見てもらおう!



大丈夫!



すぐに死ぬことはない!  




    だれか!



ついていける看護婦はいる?



君はタクシーの手配!





病院が慌ただしくなった。



診察室を出ると、



皆が私を見た。



他の患者さんに不安を与えてしまっただろうか、、



薄れゆく意識の中で、



なんだか大変なことになった、、、



と思ってうちに、



またベッドに寝かされた。



  

 看護婦さんに



実は今日は母が一緒だということを伝えると、



お母さんもベッドの部屋に来てもらいましょう。



と、母親も近くに呼んでくれた。



母親としばらく寝ながら話していると、



先生が入ってくる声がした。



はあはあ息を切らしていた。




松井さんどこ?



看護婦さんが、



こちらです!



とベッドルームのカーテンを開けた。




わあ!



お母さん!



めっちゃそっくりやないかーい!!



と先生を驚かせてしまった。



その後、



先生は、お母さんを心配させないように、



今までやった治療全部の説明と

今日のエコー写真で子宮は心配ないこと、


都立病院にはもう電話を入れたこと、


すぐに紹介状を書いて、

タクシーの手配をすること


約10分くらいかけて説明してくれた。



いつも3時間待って、

3分くらいしか話せない先生を、


今日は独占出来た気がして、


そしてお母さんがみるみる安心した顔になっていくのを見て



私は痛みの中でもすごく嬉しかった。



ものすごく忙しく手術も何件も控えているのに、


本当に責任感がある先生だ。



母親は



今日来てよかった。


あの先生ならまりちゃんを預けられるよ。



あの先生、ハンサムだね。


若い頃は大変モテただろうね。



と安心していた。



私は得意げだった。






タクシーを看護婦が1階で停めますので、



それまで寝ていてください。



と言われ、



お母さんとお話しながら待っていると、



松井さん!タクシー着きましたー!



と掛け声とともに、


カーテンがシャーと開き、



そこに現れたのは、



採卵手術の日に目にした車椅子だった。



まさかこんな形で車椅子に乗るとは!

  


さぁ!

乗って!



と言われたが、、



というか絶対待合室に50人くらいいるし、



これで外に出たら、



皆を驚かせてしまうのでは、



と思い、



これから手術の人もいるだろうし、



お断りした。



看護婦さんに見送られ、


タクシーに乗り、


5分くらいで都立病院に着いた。



 私は総合病院が嫌いだ。



小さい頃、身体が弱く、幼稚園時代はほとんど総合病院に入院していた。


その頃の記憶が蘇るのだ。



事務的だし、古いし、

暗さが不安な気持ちを駆り立てるし、


何よりすごく待つ。



待つのは慣れているが、



体調が万全ではない中、



何時間も待つのは大変だ。



しかも予約外なので一番最後だった。



母親が朝から何も食べておらず、



倒れそうだったので、



待ち時間に病院の食堂に行った。



この頃になると少しずつ自然にトイレで排尿出来るようになり、



容体は落ちついてきた。



母親と醤油ラーメンを少しだけ食べることが出来た。



志村けんのコントに出てくるような、


昭和のラーメンを



母親はすごく美味しそうに食べていた。



なんだか申し訳ない気持ちが私を突き刺した。


60超えた母親をこんなに心配させ、

連れまわし、待たせ、お腹をすかせてしまった。


だぃちゃんにも大迷惑をかけているし、



会社も休んでしまった。



申し訳ない。。 




  


結局診察の結果は、



原因不明の



急性尿閉






だった。



初めてきく言葉だが、


それもそのはず、


尿閉とは男性に多く、


さらに60代70代が多いという。


自力でおしっこが出来なり、


苦しむというものだった。



30代女性でなるのは100人に1人くらいです



と言われた。



エコーでまた撮影したが、



膀胱の肥大化は落ちついていた。



体外受精の副作用で出ることはないということで、


本当に原因不明だった。


原因不明のため、


2、3日様子をみてくださいとのことだった。

 

  7に続く。

 

 

f:id:mechainu:20170724213823j:plain

  


f:id:mechainu:20170724213852j:plain