初めての不妊治療3


さて、

毎回の待ち時間3時間を

私がどうやって過ごしていたかというと、



DSだ。



だぃちゃんは私にDSを授けてくれた。


DSでファイナルファンタジーをやっていた。


まわりの妊活中の方々が

院内に置いてある妊娠本を読んで気持ちを高めている中で、



私は剣士や魔道士達やらのレベルを高めていった。



1ヶ月、3ヶ月、1年の通院の中で、


やさぐれていた主人公セシルは


王国を滅ぼされ、


友人の剣士にも裏切られたことで、


悪から足を洗い、


魔道士の双子と仲間になるも、


道中で彼らと生き別れになり、


最初は移動手段がチョコボだけだったが、


飛空挺乗りと友達になり、


空を飛べるようになり、


そのおかげで、


好きだった女の子を敵から助け出し、


今はその子と仲直りした友人の剣士と


世界を救う旅をしている。


1年半の通院でLevel1からLevel50になった。


なかなか感動させられるストーリーであり、


途中で仲間になった憲法の達人や、


飛空挺乗りは、


セシル達を守るために、


自らどんどん自爆していく。



敵は強い。



世界に入り過ぎてしまい、


気づくと戦闘シーンでAボタンを、


カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ



と連打する音だけが院内に響いていて、


まわりの患者さんが、


不思議そうな目で私を見ている。



たまに院内においてある柴犬の雑誌を読んだりもしたが、


9割型は違う世界に出かけていた。



そんなこんなで待ち時間3時間は、


私にとっては


RPGの世界に行ける時間となったので、


そんなに苦痛に感じたことはなかった。


おしりや腰は痛くなったけれど。



前置きが長くなってしまった。

 





採卵手術当日。



採卵手術と言っても


なにをするか特に男性はピンとこないと思う。


男性で例えるなら、


尿道から25cmの長い針を入れて


タマタマまで届いたら、


たまたまにいる元気な精子を物色し、


タマタマをぶっ差しながら、


1こずつ吸い上げる。


麻酔は一切しない。


上手く伝わるだろうか。




保険は一切効かない。


受付で10万円の束をいくつか出し、


お会計を先に行う。



緊張でうんちが止まらない。



しばらくすると、


いつもと違う部屋から、


松井さーん


と呼ばれた。



入り口で名前生年月日を確認後、


リカバリールームという


6つのパーテーションで区切られた一番端の個室に案内された。



可愛いピンクのベッドに、


ピンクの手術着と帽子、小さいビニール袋が置いてあった。


看護婦さんが、



トイレを済ましたら、下は全部脱いで、ビニールには名前を書いておいてください!

お呼びするまでベッドでゆっくりしていてください。



と言われた。


リカバリールームのトイレはめっちゃ綺麗だった。


これから手術の患者さんが出来るだけリラックス出来るよう配慮されている。


体外受精をしなければ、


ここに入ることはなかった。


そんなリカバリールームのトイレで


また



うんちをした。


手術着はダウニーの匂いがした。


ベッドでゆっくりって、


なんだろう。


寝ていいんだろうけれど、


呼ばれた時にゴロゴロ寝ていたら、


やる気がないみたいに思われないだろうか。



どうしたらよいかわからないのと


緊張が合わさり、


私はベッドの上に


腰をかけて足をピンと揃え、


お地蔵さんのように



20分くらい固まっていた。




松井さーん、、、はっ!!!

なんだかきちんと座ってる!!!

大丈夫ですか?



と呼びに来た看護婦さんを驚かせた。



じゃあ行きましょうか



と手術室への道へ案内された。


すると車椅子が目に入った。


私は、



車椅子に乗らなくてはいけないくらい痛くなってしまう患者さんもいるんだ!!

こわい!!


でもきっと私は大丈夫だろう。


と自分を落ちつかせながら、


手術室へむかった。



 手術室の入り口で再度名前と生年月日を確認後、


手術室のドアが開いた。


医龍のドラマでみたような手術室がそこにはあった。


慶応ボーイを始め、


みんな割烹着みたいな頭の被り物をしており、


薄暗い室内で、


手術台だけがライトアップしていた。



慶応ボーイの先生は割烹着の頭の被り物をして、


余計ドラえもんみたいになっていた。



手術台に足を広げて寝かされた。


その後、痛さで暴れないように、


足をマジックテープで固定。


私の顔の10cmくらい側に、


佐藤栞里ちゃんみたいな可愛い


小柄な看護婦さんがついた。


佐藤栞里さんは


今から膣の消毒をします。


とか


機械を子宮に入れています。


ご気分は大丈夫ですか?


とか


私が不安にならないように、


全てを報告してくれる。



では始まります。



と栞里ちゃんから伝えられると、



何やら長い針のようなものがシュルシュル入れられ、


ドラえもんの、



はい、行くよー!!

頑張れー!!


の声がけの後、


グサっと


卵胞を刺す激しい痛みが走った。


想像以上の痛みに


私の身体は40cmくらい反射的に腰が浮いてしまい、


海老のようになった。


すると先生も海老になった私にびっくりして、


先生も海老になっていた。



はあはあしている私に


先生は、


痛くてびっくりしちゃった?

俺もつられてびっくりしちゃった。

ごめんごめん。


大丈夫だよー!


じゃあ今からここは、

お化け屋敷だよ!!


お化けでるよー!!

はいっ!



グサっ



はあはあ!!


と耐える私に、


栞里ちゃんは


痛いですよね!

松井さん頑張ってください!

松井さん頑張れー!!!



と栞里ちゃんも涙目でハアハアしながら、

全力で応援してくれた。



麻酔していないのに


痛さで意識が朦朧としている私にむかって、栞里ちゃんは、


あっ!!

松井さん!松井さん!!

ほら!卵子がとれましたよ!

見えますか?


と顔のところにあるTVに写った卵子の存在を教えてくれた。


痛さでなかなか見れなかったのだが、


たしかにTVには、


いくらというより、


とびこくらいの私の卵子


血に混じって写っていた。




採卵は続く。


グサっ


どうしても動いてしまう私の足はマジックテープじゃ足らず、


看護婦さんたちに押さえられた。


先生が、


最後の一つは膀胱ギリギリの位置にあるね。

ちょっと膀胱を針がかすめてしまうかもしれない。

頑張れ!!



と言った。


私はなかなか止血しなかったらしく、

最後の方は先生が一生懸命機械で子宮を挟んで止血していた。


助手の人たちに何やらたくさん指示していたが、



私は朦朧としていた。




松井さん!!

無事採卵は終わりました!

大丈夫ですか?


と栞里ちゃんがおしえてくれた。


結局、栞里ちゃんは私を励ます係だった。


同じ病院の他の採卵経験者のブログを見ると、


栞里ちゃんがずっと手を握っていてくれたと書いてあったのを思い出し、


患者さんを落ちつかせる配慮が本当に長けている病院だなあと思った。



手術を終えた私の両足は固定されていたせいもあり、


ブルブル震えていた。


そして安心感でボロボロ泣いていた。


看護婦さん達が



あらら!震えが止まらないのね!!



と、私の足を下ろしてくれた。



なんとかリカバリールームまで歩いて戻ることが出来た。


あやうく車椅子を使う番が来てしまうのかと思った。


リカバリールームに着くと、


15分寝かされた。


時間が経ち、看護婦さんが、


膀胱をかすめてしまった可能性があるため、尿検査をしますのでおしっこをとってきてください。


あと、膣に止血の為の2mのガーゼが入っているので、トイレで抜いてきてください。



と言われた。


他の人のブログを見ると、


真っ赤に染まったガーゼがおまたから出てきた


と書いてあったのを思い出し、


恐怖に震えながら手術したばかりのおまたから、


ガーゼを抜いた。


びっくりした。


生理3日目くらいの量しか血がでていなかった。


あんなに針を刺して、止血まで手こずったのに、


慶応ボーイの腕前凄い。


その後、そのガーゼと尿を看護婦さんに提出して、


私は震えながらベッドに横になった。



なんだか回復が遅くて、

他の手術した人たちの2倍、

安静時間をとった。


結局、尿検査の結果、


血尿が出ていた。


看護婦さんが、


ベッドに横たわる私に、



松井さん!!

膀胱に小さい穴が空いているので、

穴が塞がるまで水分を沢山とって、


バイキンが入らないように

おしっこをたくさんしてください。



とお水をくれた。


全部飲めと言うことだったが、


起き上がるのも辛かったので、


寝ながら小鳥の口で飲んだ。



4に続く。